「全然治らないから、もう大きな病院に行くしかない」――こう言って紹介状を持たずに総合病院を受診される方が一定数います。気持ちは痛いほど分かりますが、紹介状を持たずに総合病院を受診すると、患者さん自身にも社会全体にも思わぬ不利益が生じます。医師の視点から、その理由と上手な医療機関のかかり方をお伝えします。
◆かかりつけ医=健康のホームドクター
日本の医療は「身近なかかりつけ医が第一次窓口、専門的治療は紹介先で」という分担制で動いています。かかりつけ医は、既往歴や服薬、生活環境まで把握し、早期診断と継続的ケアを行う“健康のホームドクター”です。
◆紹介状の3つのメリット
①診療情報の共有…検査結果や経過がまとまり、二度手間の検査や薬の重複を防ぎます。
②医療費と時間の節約…紹介状がない初診には特別料金(特定療養費)が加算され、待ち時間も長くなる傾向があります。
③連携の強化…総合病院の医師が治療方針を決めた後も、かかりつけ医が日常のフォローを続けることで途切れない医療を実現できます。
◆「治らない」と感じたときの上手な行動
◇率直に相談…
症状が改善しないと思ったら、まずは不安を正直に伝え、説明を受けてください。病気の中には適切な治療をしても一旦増悪してから改善する病気もあります。申し訳ないからと伝えない人もいますが、遠慮なく伝えて大丈夫です。
必要と判断されれば、かかりつけ医が適切な診療科・病院を選び、診療情報を添えて紹介します。
◆総合病院にも限りある資源
総合病院は救急搬送や高度医療を担うため、ベッドや医師の数は余裕がありません。紹介状なしの受診が増えると、重症患者の受け入れや手術予定に影響することさえあります。
◆まとめ
医療はチームプレーです。かかりつけ医を中心に紹介状でバトンをつなぐことで、患者さんは最短距離で適切な治療にたどり着き、医療資源も有効活用されます。「治らない」と感じたときこそ、まずはかかりつけ医に一歩踏み込んで相談してみてください。それがご自身の時間とお金、そして社会全体の医療を守ることにつながります。
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